メンタル不調

2025年04月10日 20:49

新生活とメンタル不調

“脳の仕組み”から見えてくる、こころと身体のつながり

春。新しい生活が始まり、環境が大きく変わるこの季節。
入学、就職、転勤、引っ越し…。期待と希望がある一方で、なんとなく「疲れやすい」「気持ちが沈む」「集中できない」といったメンタルの不調を感じる人が増えるのも、実はこの時期です。

なぜ、新しいことが始まる“ポジティブなはずの時期”に、心と身体がしんどくなってしまうのでしょうか?
その理由は、“脳の働き”にあります。



原始脳は「変化」が苦手

私たちの脳は、大きく3層構造になっているといわれています。
その中でも、特にこのテーマに関係してくるのが「脳幹(のうかん)〜大脳辺縁系」にかけての**“原始脳”**と呼ばれる部分です。

この領域の役割は、「生命維持」「安全確保」「本能的な反応」。
つまり、「変化=危険」とみなすような、本能的な防御反応を担っています。

新しい生活が始まると、たとえそれがポジティブな変化であっても、原始脳は“慣れない刺激=不安”と判断して、防御モードに入ることがあります。
すると、自律神経は交感神経優位となり、常に緊張状態が続いてしまう。その結果、寝つきが悪くなったり、食欲が落ちたり、集中力が途切れたりといったメンタルや身体の不調が現れてきます。



メンタル不調は「脳のエネルギー低下」

さらにもう一歩、脳の働きから見てみましょう。
私たちの脳は、体重のわずか2%の重さにもかかわらず、全エネルギーの20%以上を消費している“エネルギー消費のかたまり”です。

そして、新生活では「覚えること」「気を遣うこと」「判断すること」が急激に増えます。
これらの情報処理を担うのは、脳の中でも**前頭前野(ぜんとうぜんや)**という領域。ここは、意欲、集中、感情のコントロールなどにも深く関係しています。

ストレスや環境の変化によって、原始脳が警戒モードに入ると、前頭前野への血流が減り、機能が一時的に落ちることがあります。
これが、「やる気が出ない」「涙もろくなった」「気分が沈む」といったメンタル不調につながっていきます。



身体からケアするメンタルケア

ここで大事なのが、「心の不調だからといって、“心だけ”で何とかしようとしないこと」です。

脳のエネルギー状態は、「栄養・睡眠・呼吸・姿勢」といった身体的な要素に大きく左右されます。
とくにオステオパシーの視点では、呼吸や頭蓋リズムの乱れ、内臓の緊張、脊柱の可動性低下などが、原始脳の“過覚醒状態”と関係しているとされます。

つまり、「なんとなく落ち着かない」「やる気が出ない」といったメンタル不調も、身体の構造や循環を整えることからアプローチできるのです。



新生活のストレスに対して「今できること」
1. 朝日を浴びる
 朝の光は、脳内時計をリセットし、自律神経を整える最大のスイッチです。できれば朝起きたら5分でも窓を開けて光を浴びてみましょう。
2. リズムのある呼吸を意識する
 息を「吐く」ことを意識すると、副交感神経が働きやすくなります。1日1回、3分間でいいので“深くゆっくり吐く”呼吸を試してみてください。
3. スマホと距離を置く時間をつくる
 スマホからの情報は、脳にとって“絶え間ない刺激”。特に夜のスマホは前頭前野の休息を妨げます。寝る1時間前はできれば“脳を休める時間”にしてみましょう。
4. 身体を整える施術を受ける
 脳の緊張や興奮が取れにくいときは、専門家の力を借りるのも選択肢です。頭蓋や内臓の調整によって、神経系のバランスを整えるアプローチは、薬に頼らず本来の回復力を引き出す手助けになります。



まとめ:こころの不調は「脳」と「身体」のサイン

新生活で感じるメンタルの不調は、決して「弱いから」ではありません。
むしろ、それはあなたの脳と身体が“変化に対応しようと頑張っている証”とも言えます。

脳の仕組みを知り、身体からのアプローチも取り入れることで、「自然な回復力」が働き出します。

もし今、気持ちが沈んでいる人がいたら、焦らず、身体をゆるめることから始めてみてください。
自分を責めるのではなく、整える。
あなたの心と身体は、ちゃんと回復する力を持っています。

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